【専門家寄稿】「車1割削減、渋滞半減、公共交通2倍」をめざして -第3回-

~第3回:実現に向けて~
㈱トラフィックブレイン 代表取締役社長 太田 恒平氏

はじめに

 熊本都市圏では近年、「政令市ワースト」と言われる渋滞に加え、市電のトラブル、バスや熊本電鉄の減便、JRの混雑など、交通が社会問題化している。一方で、筆者らの研究活動が掲げた「車1割削減、渋滞半減、公共交通2倍」が県市の共通目標となり、課題解決に向けた動きが始まっている。最終回の今回は、実現に向けた政策や合意形成のあり方について述べる。

目次

  1. 赤字削減から公的投資への発想の転換が必要
  2. 車社会だから道路整備?
  3. 「車 1 割削減、渋滞半減、公共交通 2 倍」に必要な政策の規模
  4. 実現に向けてできること

レポート一部

1.1 世界の公共交通は赤字で当たり前、行政主体で運営
 日本の都市部では、公共交通は民間の独立採算による運営が基本とされてきた。しかし実際のところ
熊本の各交通事業は総じて営業赤字であり(図表1)、赤字削減に官民で努めてきた。その結果として減便・値上げ・利用減・賃金減・運転手不足といった負のスパイラルを繰り返し、熊本の車依存は進んで
 一方で世界に目を向けると、公共交通の収支率は半分前後が一般的であり(図表 2 )、不足分は税金
により賄われている。この世界的な相場と比べると、熊本各社の80%以上という収支率はむしろ高すぎる、つまり運賃が高すぎる・サービスが悪すぎるという水準なのである。
 欧州では公共交通は①公共サービスと②商業的サービスに分類される。都市内の鉄道・バス等は①
公共サービスであり、教育や医療と同様に、公的資金が投入され行政主体により高質に運営されている。日本の地方都市交通もそのような事業形態に変えていく必要があるだろう。

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