【年末のご挨拶】今年1年の熊本経済の振り返り 公益財団法人 地方経済総合研究所 専務理事 中本 秀二

 会員の皆様ならびに関係各位におかれましては、平素より当研究所の活動に格別のご理解とご支援を賜り、心より御礼申し上げます。年の瀬を迎えるにあたり、本年の国内外の動きと熊本経済の潮流を振り返りたいと思います。
 本年の日本経済は、年初に日本銀行が政策金利を0.25%から0.5%へと引き上げ、昨年のマイナス金利解除に続いて金融政策の正常化を一段と進めたことから幕を開けました。春闘では大手企業を中心に前年を上回る賃上げが相次ぎ、景気回復への期待が高まる一方で、 4 月には予想を超えるドラスティックなトランプ関税が発表され、輸出産業のみならず幅広い分野で不確実性が高まりました。さらに、年初から続いたコメ不足と価格高騰を受けて政府が備蓄米を放出するなど、「令和のコメ騒動」と呼ばれる事態が社会的関心を集めました。食料品をはじめとする生活必需品の価格上昇が続くなか、賃上げが物価上昇に追いつかず、実質賃金はマイナス圏にとどまり、消費者の節約志向が定着した一年でもありました。そのような環境下で開催された大阪・関西万博は、予想を上回る来場者を記録し、社会全体に新しい活力をもたらしました。10月には女性として初めて高市総理が誕生し、経済安全保障や物価対策の新たな展開に対する期待感が高まるとともに、日経平均株価は史上最高となる5万2千円を突破し、わが国経済が次のステージを模索する姿が見られました。
 県内に目を向けますと、2024年末にJASM第一工場の本格稼働が発表された一方で、2月には第二工場の着工延期が伝えられるなど、世界的な半導体需要の不透明感を反映する動きが見られました。しかし、一時的な調整局面の中にあっても、熊本県は「くまもとサイエンスパーク推進ビジョン」の策定や、県立大学における半導体学部の新設検討が発表されるとともに、三菱電機の新工場竣工など、次代を見据えた確かな布石が着実に進みました。その一方で、最低賃金が初の1,000円台となる1,034円に引き上げられるなど、企業経営にとっては賃金上昇と人材確保の両立という大きな課題が浮き彫りになりました。10月にはJASM第二工場の建築が着工するという朗報があったものの、インフレと人手不足が常態化する中で、熊本の経済社会も大きな変革の中の転換点にあることを、改めて感じさせられた一年であったと思います。
 当研究所では、経営理念「地域経済社会の知恵袋であり続け、未来への扉を共創する」を実践するため、時代の変化を先取りしながら組織の質的向上に努めてまいりました。本年度は、「経営デザイン認証ランクアップ認証」「DX認証」「健康経営優良法人認証」を新たに取得し、経営品質や職員の健康経営、デジタル化推進を通じて、より信頼される地域シンクタンクとしての基盤を整えてまいりました。
 また、急速に変化する熊本経済の環境を踏まえ、当研究所の将来像を再構築するための大きな決断として、株式会社肥後銀行の出資による「株式会社地方総研」への機能移転を進めることといたしました。これは、財団として培ってきた知見とネットワークを、より機動的で柔軟な形で地域社会へ還元するための発展的な再編であり、まずは自治体や地域企業との受託事業を中心に、段階的に移行を進めてまいります。そして、単なる組織形態の変更ではなく、地域の皆様と共に歩み、熊本の強みと可能性を未来へとつなぐための「知恵と共創の拠点」であり続けたいと願っております。
 本年も多大なるご支援とご協力を賜りましたことに、改めて深く感謝申し上げますとともに、皆様にとりまして新しい年が実り多く、希望に満ちた一年となりますよう心よりお祈り申し上げます。

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