【眺望】熊本県工業連合会30周年

熊本県工業連合会
会長 宮村 宜明

 本年度より熊本県工業連合会の会長を務めさせていただくことになりました。
 工業連合会は今年で設立30周年を迎えます。設立当時は「県内企業の力を結集し約 2 兆 7 千億円の熊本県の製造品出荷額を 4 兆円に引き上げよう」というのが最大の目的でした。
 当時は「肥後の引き倒し」という言葉も存在するように、誰かが成功したり頭角を現わしたりするとその人の足を引っ張る傾向があったようです。地場企業が足の引っ張り合いをするのではなく連携を深め高付加価値の仕事にチャレンジしていこう、という目標を掲げてのスタートだったと思います。この30年、「経営基盤強化、人材確保・育成、施策提言、産学官連携、国際ビジネス・販路開拓、企業活力向上」など様々な活動をしてきました。会員企業の経営に少なからず貢献できたのではないかと思っています。2022年時点の製造品出荷額は約3 兆 5 千億円で目標にはまだ及びませんが、熊本にはTSMC進出という大きな風が吹き始めました。これを契機に半導体関連産業が中心となり熊本の工業界が連携、協力すれば目標達成は夢ではないと思います。
 このような追い風がある一方、県の統計調査では30年前に3,500程度だった製造業の事業所数は2023年に2,238に減少しているとのことです。企業が環境の変化に適応していくことの難しさを表す一つのデータではないかと思います。私自身も経営者の一人として強く感じることは、企業が存続していくためには環境に適応していくことが重要だということです。昨今の経営を取り巻く環境は不透明さを増しています。人材確保難、原材料の高騰、事業承継、関税問題など課題は山積しており、企業の永続は困難さを増しています。いまこそ工業連合会が産、学、官、金と緊密に連携し、会員企業に対する有益な情報提供、セミナーの開催、行政への提言などを実行していくことが大切だと考えています。
 私自身が30年近く関わってきた工業連合会で得た一番の財産は、経営課題に直面した時に信頼して相談できる先輩、仲間ができたことです。そのエピソードを紹介します。工業連合会の設立後まもなく、生産連携を目的とした「Gamadas」というグループができました。一社ではできない仕事を共同で受注し付加価値を生むことが目的です。私もこのグループに発足当時から参画していますが、発足間もないころに実績を上げたい一心で責任所在をはっきり決めないままに仕事を受注して大赤字になり、参画した企業でその赤字を負担せざるを得なくなったという苦い思い出があります。その失敗から学び、今では幹事会社を決め受注すると決めていますが、長年の事業活動を通じて築かれた信頼関係は私にとって貴重な財産となりました。工業連合会には「Gamadas」以外にも若手経営者を中心とした「熊志会」やビジネスを目的とした部会、研究会も多数あります。若い経営者の方々には部会に参画していただき、自社の経営に役立ててもらえれば大変素晴らしいことだと思います。

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