【眺望】「変化の時代でも、持続可能な熊本経済を育てるために」 熊本県商工労働部長 上田 哲也氏

 物価の高騰、人件費の上昇――最近、県内の企業の皆さんから、そんな言葉を耳にします。原材料費やエネルギーコストの高止まりに加え、従業員の賃金引き上げにも取り組まねばならず、経営の舵取りは一段と難しくなっています。加えて、米国の関税措置など国際情勢の影響も、県内中小企業にとっては決して小さくありません。
 こうした厳しい局面を乗り越え、持続的な成長につなげるためには「生産性の向上」が重要です。国では「中小企業生産性革命推進事業」を通じて、ものづくり補助金やIT導入補助金などの支援制度が整備されています。熊本県では、こうした国の施策と連動しつつ、地域の実情に応じたきめ細かな支援策を展開しています。
 また、スタートアップへの支援については、地域経済に新しい風を吹き込むものであり、今年6月、熊本は内閣府による「第 2 期スタートアップ・エコシステム拠点都市(NEXTグローバル拠点都市)」に選定されました。これを受けて、「くまもとスタートアップ・エコシステム コンソーシアム」を設立し、スタートアップの創出・発展、地場企業との協業、海外展開などを幅広く支援することで、地域経済の発展や社会課題の解決を目指しています。
 世界最大級のスタートアップピッチコンテスト「スタートアップW杯」では、2024年に熊本大学発ベンチャー・株式会社StapleBioがこれまで治療が困難だった希少疾患等に対する医薬品開発で、2025年にはトイメディカル株式会社が塩分の過剰摂取問題解決への取組みで評価され、 2 年連続熊本の企業が世界大会への切符を手にしました。地方から世界へ。夢を現実に変える挑戦する姿は、熊本のスタートアップの可能性と実力を力強く示しています。
 もう一つの重要なテーマが「事業承継」です。南小国町にある創業30年の人気味噌ラーメン店では、店主の高齢等により第三者への事業承継を決意されました。県の補助事業を活用し、オープンネームで後継者を探した結果、同じ南小国町のそば店に勤務されている方が、伝統の「味噌」を引き継いでメニュー化し、新たに手打ちそばのお店としてオープンされました。こうした取組みで、地域に根ざした事業者の技術や雇用がしっかりと次世代につながれています。このほか、デジタル技術の導入や地域資源のブランド化、海外展開なども支援しながら、熊本経済の力をさらに引き出していきます。
 熊本の経済は、挑戦を恐れず、しなやかに変化に対応していく底力を持っています。企業、行政、そして地域の皆さまと手を取り合いながら、この変化の時代を共に乗り越え、より良い未来を築いていきましょう。 


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