【眺望】 心弾む “感動県くまもと” へ(2) 熊本県観光連盟 専務理事 倉光 麻里子氏

 人々の消費行動は、商品の所有を重視する「モノ消費」から体験に価値を見出す「コト消費」へ、そして今は、その時・その場でしか味わえない盛り上がりを楽しむ「トキ消費」に変容していると聞きます。「トキ消費」とは?検索してみると、フェスやライブ、クラウドファンディング、アイドルの総選挙、聖地巡礼等々、なるほどと頷ける事例が並んでいます。
 県が進めているマンガやアニメと地域資源を掛け合わせたコンテンツツーリズムも、トキ消費の要素を多く含んだ取組みです。
 まず、皆様もご存じの「ONE PIECEくまもと復興プロジェクト」。熊本地震からの創造的復興の後押しを目的に、熊本県出身の漫画家・尾田栄一郎氏が描く人気漫画『ONE PIECE』と県との連携により立ち上がったプロジェクトです。復興の象徴として県庁プロムナードに設置されたルフィ像の周辺には、連日国内外から多くの人々が訪れ、右手をあげてルフィと同じポーズで撮影している光景をよく目にします。被災市町村に設置された他9体の「麦わらの一味」の銅像周辺も大変賑わっており、『ONE PIECE』が世界中の人々から愛されていることを実感します。清和文楽とのコラボや南阿蘇鉄道を走るサニー号トレインなど、地域資源を活用した熊本ならではのコンテンツ展開も積極的に行われています。
 昨年、ナビタイムジャパンが公表した訪日外国人観光客の誘客・周遊動態調査によると、2019年度と2023年度を比較した外国人旅行者の滞在増加率で熊本県が全国1位となりました。さらに県内の来訪場所では、 9 位までを銅像が設置されている市町村が占めるという驚くべき結果でした。
 銅像とその周辺をめぐるバスツアーも造成され、県内各地を楽しんでいただく仕組みもできています。令和 8 年は熊本地震から10年という節目の年であり、更なる展開が期待されます。
 もうひとつご紹介したいのは、人吉・球磨地域がアニメのモデル地となっている『夏目友人帳』。国内外から多くのファンがこの地域を訪れており、令和2年7月豪雨災害からの復興の後押しにもなっています。アニメのキャラクターと一緒に写真が撮れるAR機能付きデジタルスタンプラリーや、モデル地をめぐるガイド付きタクシープランなど、地域を楽しめる仕掛けもとても好評です。夜間、アニメのキャラクターを街角の建物等に映し出す「影絵」も、アニメの幻想的な世界観と相まって訪れる人を魅了しています。
 両作品とも元々国内外に多くのファンを持つ強力なコンテンツではありますが、そこに行政や地元の努力があって地域資源を生かした好循環が生まれ、その時・その場でしか味わえない心弾む“トキ”を創り出しています。
 観光連盟においても、熊本に来られた方々にかけがえのない“トキ”を過ごしていただけるよう、これからも各地域の皆様とともに、心弾む“感動県くまもと”づくりに取り組んで参ります。

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