新年のご挨拶 公益財団法人 地方経済総合研究所 理事長 笠原 慶久

 新春の候、皆様におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。平素より当研究所の活動に格別のご理解とご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。
 県内では、半導体関連企業の集積が一段と進展し、JASM第一工場は量産段階に入り、第二工場は2027年末の生産開始に向けた建設が進行しております。これに伴い、関連サプライヤーの進出や設備投資が継続し、県内サプライチェーンの広がりが期待されております。あわせて、物流や交通の円滑化を目的とした道路網整備も進み、将来の産業基盤を支えるインフラの強化が着実に進展しております。
 一方で、製造業全体で見た県内自給率は全国比で必ずしも高いとは言えない状況にあり、産業集積の成果が地域内に十分還元されない可能性も指摘されます。地元企業の投資による主体的な参画を促すとともに、九州域内での調達率向上など広域的な視点からの連携強化が求められております。また、AI、DX、IoTなど半導体を活用する産業群の育成を進め、地域内で技術・人材・資金が循環する構造をいかに生み出すかが、今後の地域発展の鍵となります。
 県内経済を取り巻く環境に目を向けますと、政府による物価抑制策等を背景に消費者物価の上昇ペースは徐々に鈍化する可能性があり、大企業を中心とした賃上げの継続は実質購買力の下支えとなることが期待されます。こうした動きが慎重姿勢の続いていた個人消費の改善につながれば、需要面でも明るさが広がると見込まれます。その一方で、米中関係や経済安全保障をめぐる不確実性は依然として高く、製造業を中心に外部リスクへの備えを怠ることはできません。こうした諸要素を総合すると、県内経済は総じて緩やかな成長軌道を辿ると見込まれ、当研究所の推計では、2026年度の名目県内総生産額は過去最高となる7兆1,231億円に達し、物価変動の影響を控除した実質成長率も0.9%のプラスを見込んでおります。
 また、本年は、熊本地震から十年という節目の年でもあります。創造的復興の歩みは県民の皆様の不断の努力と全国からの温かい支援によって着実に進み、より強靭で持続可能な地域社会へと確かな進化を遂げてまいりました。この強固な基盤は、現在の半導体産業集積という歴史的な機会を最大限に活かす力となっております。
 こうした変革の時代にあって、当研究所では調査・研究機能の一層の高度化を図るべく、昨年設立した「株式会社地方総研」とともに未来を切り拓く活動を進めてまいります。地域経済の将来を見据えた戦略的分析、政策提言、行政・産業界・学術機関との協働による課題解決支援を強化し、「地域経済社会の知恵袋であり続け、未来への扉を共創する」というミッションの実現に向けて尽力してまいります。
 ここに新年を迎え、皆様の益々のご発展を祈念し、年頭のご挨拶とさせていただきます。

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