製造業集積の熊本県内への経済波及効果を高める ~域内賃金循環にみる漏れの構造~
はじめに
熊本県では半導体関連産業を中心に製造業集積が進み、本県の産業構造は製造業の比重が増してい
くと考えられる。県内総生産額のさらなる増加が見込まれる一方で、現状の県民所得は低位に位置し
ており、一因として資金循環の構造に課題があると考えられる。本稿では、熊本県の資金循環構造に
ついて分析し、県民所得を高めるための方策を探る。
目次
はじめに
1.熊本県内経済の現状
2.産業構成と製造業の位置付け
3.自給率の九州各県との比較
4.資金循環の流れと「漏れ」の構造を把握する
5.雇用者報酬と域際収支の相関関係
おわりに
レポート一部
1.熊本県内経済の現状
(1)総生産額の推移
熊本県の名目県内総生産額の推移をみると、2011年度の5.5兆円から、熊本地震が発生した2016年
度に初めて 6 兆円を突破、コロナ禍で一旦落ち込むもその後回復し、2022年度は過去最高額の6.6兆
円となっている(図表 1 )。また、半導体関連産業を中心に国内外からも集積が進む中、設備投資が
県内経済へ大きく寄与し、2023年度以降も順調に推移する見通し((公財)地方経済総合研究所予測)
となっている。
