高付加価値経営への道のり~挑戦と投資で未来を切り拓く~

はじめに

 どの業種、どの企業からも「ヒトが足りない」との声が聞かれる。㈱帝国データバンクの「人手不足倒産の動向調査(2024年)」によると、国内における2024年の「人手不足倒産(負債1,000万円以上)」は過去最多の342件となった。今後も人口減少が続く日本や本県において、現場の人手確保のカギとなるのが「賃上げ」であろう。本稿では、賃上げを実現するための原資を増やす「生産性向上」、すなわち「高付加価値経営」には何が必要か、事例を交えながら考察する。

目次

  1. 日本の生産性の現状
  2. なぜ生産性向上が必要なのか
    (1)人手不足の解消
    (2)賃上げ余力の確保
  3. 事業者ヒアリング
    (1)製造業:株式会社池松機工
    (2)情報通信業・専門サービス業:株式会社QoQ(クオーク)
  4. おわりに

レポート要旨

  • 生産性とは、投入した資源に対してどれだけの付加価値を生み出したかを示す指標であり、日本は就業者1人あたりの生産性がOECD加盟38カ国中32位と低迷している。
  • 国内では足元でも人手不足感が強まっており、将来的には不足感がさらに加速することから、機械化や自動化、ムダ削減など生産性向上の取組みの重要性は高まる。
  • 中小企業の労働生産性は過去30年間ほとんど変化しておらず、労働分配率の面から見ても賃上げ余力に限界が見えつつあることから、「人手不足解消」と「賃上げ余力確保」に向けた生産性向上は急務といえる。
  • 県内製造業の事例では、DX投資や人的資本投資を積極的に行い、従業員のモチベーションアップや物価を上回る賃上げを継続していた。
  • 県内IT企業の事例では、オープンイノベーションと「挑戦し続ける風土」により、新規事業や海外展開などに積極投資を行っていた。
  • 高付加価値経営への道のりとしては、DXや研究開発、人的資本への先行投資が重要である。これにより粗利が改善し賃上げ原資が生まれ、従業員のエンゲイジメント向上にもつながる好循環が期待される。先行投資の効果を高めるためには、企業内に「挑戦し続ける風土」を醸成することが欠かせないと考えられる。

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