熊本のグリーンインフラ事例 ― 竹筋コンクリートと雨庭が一体となった「あさぎりの竹しずく
熊本県球磨郡あさぎり町に完成した「あさぎりの竹しずく|雨を楽しむグリーンインフラ駐車場」は、単なる駐車場ではなく、「雨を楽しむ」ことをコンセプトに設計された空間です。
このプロジェクトは、2020年の球磨川水害を契機に始動した「地域共創流域治水」プロジェクトの一環として、地方経済総合研究所が国土交通省の「グリーンインフラ創出促進事業」に採択されたことで実現しました。
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あさぎりの竹しずく|雨を楽しむグリーンインフラ駐車場

「あさぎりの竹しずく」は、鉄筋の代わりに竹で組んだ「竹筋(ちっきん)」を入れた竹筋コンクリート舗装による駐車場と、雨水を溜めて地中に浸透させる植栽空間である雨庭が一体となった施設です。
本プロジェクトの特徴は大きく分けて3つあります。
1つ目は、竹筋をはじめ地域の竹を活かしたデザインであること。
2つ目は、雨が降ると楽しくなるようデザインを工夫したこと。
そして最後が、多様な専門家や地域住民による共創のプロセスによって実現したことです。
竹を活かしたデザイン

竹筋の技術自体は戦前からあると言われており、現存する構造物への使用も確認されています。
戦後、鉄の供給が安定し竹筋コンクリートはほとんど使われなくなりましたが、現代の放置竹林の問題や脱炭素の観点からも鉄に代わり竹筋を使う動きが見られます。
本プロジェクトでは、駐車場部分のコンクリート舗装の中に竹筋を埋めています。特に車が駐車できる橋梁部分に竹筋を使うことは挑戦的な取組みです。
今回の施工では、約52.6kgの竹を竹筋コンクリート部分に使用しています。Xuらの研究によると竹1kgあたりの炭素固定量は0.6kgであるため、竹筋部分だけで31.6kgの炭素が固定されていることになります。
一方で、仮に鉄筋を同じ長さで施工した場合、その重量はおよそ149.25kgとなります。一般社団法人日本鉄鋼連盟の報告書によると、鉄鋼を精製する時に排出する温室効果ガスの原単位は鉄1kgあたり2kgなので、今回の施工に鉄筋を用いたとすると298.5kgの温室効果ガスを排出していることになります。これを炭素換算すると炭素81.49kg分です。
素材だけの比較になりますが、竹筋で鉄筋の代替をすることによって約113kgの炭素の差があります。
ただし、強度に関しては鉄筋が竹筋の約3倍あるため、壁や柱などの構造物への活用にはまだ課題が残ります。
雨を楽しむデザイン

「竹しずく」には隣に立つ建物の屋根(86.9㎡)に降った雨が竪樋を伝って流れ込みます。
竪樋は3方向に分岐していて、壁面に向かって左側に分岐した雨水は透明な雨水管を流れ、鹿威しに落ちます。既存の竪樋から落ちる雨水はそのまま雨庭に流れ込みます。
右に分岐した雨水は、焼酎樽を再利用した雨水タンクに一時貯留されます。
タンク内の雨水は一定の高さまで水位が上がると、オーバーフロー管を伝って舗装面に掘られた水路を流れます。水路は池へと繋がり、一時的に貯留されます。池が溢れると、流出口から再び水路を伝い、最終的には雨庭に流れ込みます。
雨が降るとつい足を止めて、鹿威しが音を鳴らすまで待ちたくなる、雨が待ち遠しくなるようにデザインされています。池があることで雨が水場をつくり、そこに生きものも集まっています。
おわりに

共創のプロセスが共感を呼び、多くの方が流域治水に寄与する場が増える動きが球磨川流域から始まろうとしています。
このように多くの関係者とともにビジョンを共有しながら丁寧にプロジェクトを進めていくことが、多くの賛同者を集めてグリーンインフラや流域治水の取組みを広めることにつながるでしょう。「竹しずく」は、駐車場であり雨水貯留浸透施設(雨庭)であり、竹材の可能性の提示や生物のすみかとしても機能しています。
この多要素であることが、誰かしらの「やってみたい」という意識に結び付く可能性を広げています。
この共感を生むことと同時に、さらに加速度的にプロジェクトを広く実装していくには、科学的な論拠を示す必要があります。
「竹しずく」では竹筋の強度や雨庭の効果についてモニタリングを続けており、ここで得たデータは随時次のプロジェクトに生かすことができます。
水や山に囲まれ自然と近い暮らしが残る球磨川流域から、グリーンインフラの取組みが波紋のように全国に広がる日も遠くはないかもしれません。
本プロジェクトについて、レポートに詳細にまとめています。
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