熊本で進む半導体人材育成 ― 企業と大学が動き出す「次世代エンジニア育成」

九州半導体人材育成等コンソーシアムによると、TSMCを中心に半導体関連企業の集積が進む九州では、年間1,000人規模の専門人材が不足すると見込まれています。
こうした状況を受け、熊本県内では民間企業・教育機関の双方が動き出し、「育てながら産業を支える」ための新たな仕組みづくりが進んでいます。
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企業による実践型研修施設の拡大

2023年には、日総工産やSCREEN SPE サービスなどが相次いで新拠点を開設し、装置の新規セットアップやメンテナンス技術・品質管理など、即戦力となる実務教育を展開しています。さらに2025年4月には、ワールドインテックが大津町に最先端の半導体製造設備を用いたトレーニング施設を開設するなど、熊本ではここ数年、半導体関連の研修施設が次々と新設され、民間企業主体の育成基盤が急速に整いつつあります。
また、アスカインデックスが運営する水俣市の「半導体実技総合大学校」は、水俣高校との連携協定のもとで半導体に関する授業を実施し、企業研修の受け入れも行っています。このように、高校生から社会人までを対象とした、実践的な人材育成の仕組みが構築されつつあります。
大学・専門機関によるリスキリングと新学部構想

教育機関の動きも活発です。
熊本県立大学は、2027年4月に半導体分野に特化した新学部を設置予定。熊本大学でも新たな研究教育棟が完成し、2026年度にはリスキリングセンターの設置も計画されています。社会人や転職希望者を含む幅広い層を対象に、「再教育の仕組みづくり」を重視している点が特徴です。
こうした取り組みは、学生教育にとどまらず、地域全体で人材の循環と再スキル習得を促す動きとして注目されています。
企業進出とともに変化する人口動態

半導体関連企業の立地が進む大津町・益城町・合志市・西原村などでは、人口の社会増(転入超過)が続いています。
熊本県統計調査課の調べによると、2025年7月1日時点で大津町の人口は前年同月比で1.35%増加し、菊陽町も0.13%の増加となりました。一方、熊本市は0.17%の減少を示しており、産業集積が郊外地域の人口構造を変化させつつあることが明らかになっています。
こうした動きは、半導体人材の「育成」と「定着」が、もはや教育政策の枠を超え、都市計画や生活インフラと一体で考えるべき地域課題となっていることを示しています。
「学びと産業の循環」が熊本を支える

熊本の半導体産業の発展を支える鍵は、技術だけでなく、人材の確保・育成・循環にあります。
企業・大学・行政が連携し、教育から実務、研究、再教育までを一貫して支える仕組みづくりが求められています。
今後、教育機関によるリスキリング支援や、企業内トレーニングのデータ連携が進むことで、熊本発の半導体人材育成モデルが全国のロールモデルとなる可能性が高まっています。
半導体に関する人材育成について、下記レポートでもご紹介しています。
会員の方は「専門人材育成に向けた企業や教育機関の動き↗ 」をご覧ください。
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