熊本で進む大型再開発―空港アクセス鉄道と熊本市の新庁舎移転で描く“未来の都市像”

再開発のイメージ

熊本では今、大型再開発の動きが本格化しています。

熊本市庁舎の移転建て替えや空港アクセス鉄道の整備をはじめ、中心市街地から県南・県北へと広がる都市構造の再編が動き始めました。

本稿では、県内で進行中の主要プロジェクトをまとめて紹介します。

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熊本市庁舎の移転建て替えが始動

熊本市役所

熊本市は2024年8月に新庁舎整備の基本構想をまとめ、2025年度から基本計画の策定に着手します。

本庁舎と議会棟は「NTT桜町敷地」に、中央区役所は「花畑町別館跡地」に建設する方針で、景観の確保やにぎわいの創出といった観点から機能を分担する計画です。

着工は2028年度以降を予定しており、工期はおおむね4〜5年。概算事業費は約616億円ですが、合併推進債の活用により国の支援を受けることで、市の実質負担は約255億円に抑えられる見込みです。

また、現庁舎跡地の利活用も注目されています。

ハイクラスホテルを軸に、商業施設や住宅、オフィスなどを組み合わせた複合施設が複数提案されており、2026年度末には「まちづくりプラン」として方向性が示される予定です。

まちなか再生プロジェクト

熊本城から眺めた熊本市内

熊本市では、老朽建物の建て替えを支援する「まちなか再生プロジェクト」が進行中です。

2020年度に始まり、2030年度までに中心市街地で100件の建て替えを目指しています。

同プロジェクトの活用案件は、2025年3月時点でShinsekai下通GATEやJR熊本春日北ビルなど12件に達しています。

また、熊本市内では、東区湖東の熊本市民病院跡地や中央区南千反畑町の熊本総合庁舎跡地など、公共施設や大型商業施設跡地の再開発も計画されています。

県内各地で広がる再開発ネットワーク

新八代駅

熊本市以外でも駅周辺を中心に整備事業が計画されています。

新八代駅周辺ではアリーナ建設を想定した整備構想が進められており、菊陽町・原水駅周辺で進行中の土地区画整理事業「知の集積エリア」も、「くまもとサイエンスパーク」の「イノベーション創発エリア」整備と関係しています。

鉄道の整備

空港アクセス鉄道

2025年6月、熊本県は空港アクセス鉄道の整備ルートの絞り込み案を公表しました。JR豊肥線の肥後大津駅から分岐し、国道57号や白川上空を越えて熊本空港南側に至る全長約6.8キロメートルのルートです。

空港利用客の利便性確保のため、空港駅と旅客ターミナルビルは空中回廊または地下通路で直結する方針です。

概算費は2022年に410億円と発表されていましたが、物価高騰などを背景に、2025年9月には610億円に増額されました。着工は2027年度、開業は2034年度末を目指しています。
空港アクセス鉄道の中間部には、列車の行き違いを行う施設が整備される予定です。大津町では中間駅を設置し、駅周辺では宅地や商業施設の開発を誘導する計画です。単なる交通インフラではなく、新しい生活圏の核として期待されています。

JR肥薩線の復旧

2020年7月豪雨で被災し、運休が続いていたJR肥薩線の八代ー人吉間について、熊本県とJR九州は2025年4月、復旧に向けて最終合意しました。

国と県が復旧費約235億円の約9割を負担し、2033年ごろの運行再開を目指すとともに、県と沿線市町村は観光施設の整備などの施策を掲げました。

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未来を見据えた“コンパクトで持続可能な都市づくり”

熊本駅周辺

渋滞解消と地域連携を進めるため、道路網の整備も進行中です。
熊本環状連絡道路の新規事業化に加え、熊本西環状道路の池上工区が2025年10月に開通しました。

人口密度の維持と公共交通ネットワークの充実を両立しながら、災害に強く、住み続けられる“コンパクトで持続可能な都市づくり”が重要です。

熊本の再開発について、レポートに詳細にまとめています。
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