くまもとサイエンスパーク推進ビジョンとはー分散型イノベーション拠点の構想

熊本県は、2025年3月に「くまもとサイエンスパーク推進ビジョン」を公表しました。
本ビジョンは、熊本県の産業成長ビジョンや半導体産業推進ビジョンの改訂と並行して策定された施策の一つです。
本稿では、この「くまもとサイエンスパーク推進ビジョン」について、構想の具体像や地域経済への影響、さらには環境保全との両立に向けた取り組みを掘り下げていきます。
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くまもとサイエンスパーク推進ビジョンの概要

「くまもとサイエンスパーク推進ビジョン」は、半導体の安定生産を確保することで日本の経済安全保障に貢献するとともに、「地方からの活性化」を図り、地方創生の成功モデルとなることを目指しています。
策定にあたっては、台湾のサイエンスパークが参考とされましたが、台湾の新竹サイエンスパークのような広大な土地を用意するこが難しい日本において、セミコンテクノパークを中核拠点とする「分散型サイエンスパーク」として、熊本の自然環境と調和した独自の形態を具現化することが目指されています。
分散型サイエンスパーク
「分散型サイエンスパーク」は「くまもとサイエンスパーク」の基本理念でもあります。
セミコンテクノパーク近隣エリアを中核拠点と位置付け、サイエンスパークとして必要な機能を複数の拠点で分担するという構想です。
立地企業間や大学・研究機関との共同研究を行うなど、有機的な繋がりの実現を目指しています。
この「分散型サイエンスパーク」の構想は、九州全体の半導体関連産業振興を目的に、(一社)九州経済連合会が事務局となって2024年6月に承認された「新生シリコンアイランド九州グランドデザイン」が描く「イノベーション・マルチハブ」の考え方に通じるものです。
イノベーション・マルチハブとは、九州全体を「産業競争力の源泉エリア」とするために、企業のR&D拠点や製造拠点、大学・研究機関が集積する産学連携拠点を多極的に整備し、戦略的に連携させるというものです。
くまもとサイエンスパーク推進ビジョンについて、レポートに詳細にまとめています。
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くまもとサイエンスパークの「5本の矢」

「くまもとサイエンスパーク」では、構想の実現に向けた中核的な戦略として、次の5項目を「5本の矢」と位置づけています。
- 半導体関連企業や半導体を使うユーザー企業の集積
- 新たな産学官連携拠点「イノベーション創発エリア」の整備
- 「パークマネジメント法人」の設立
- 半導体人材育成に特化した大学・研究機関の誘致
- 学生・企業・研究者が共同で利用できる設備の整備
「半導体を使うユーザー企業の集積」を掲げているのは、半導体関連産業において、GAFAMに代表されるような「半導体を使ってビジネスを展開している企業」が、最も大きな付加価値を提供し収益を上げているためです。

熊本県の産業振興政策の歴史的経緯
熊本県は、1962年の「新産業都市建設促進法」などの国の政策を活用し、工業用地といった産業基盤の整備に努めるとともに、1964年には「工場設置奨励条例」を制定し、工場誘致を推進してきました。
こうした流れの中で、熊本県は1982年に「熊本テクノポリス基本構想」を策定しました。これは、翌1983年に制定された「テクノポリス法」に先駆けた取り組みであり、構想策定を機に企業進出が増加しました。
同年には企業誘致推進本部および企業誘致対策室が新設され、翌年度からは進出企業を対象とした優遇制度も導入されています。
2000年には、県の中長期の工業振興施策の指針である「熊本県工業振興ビジョン」が策定され、半導体分野が戦略的分野として明確に位置付けられました。これにより、企業誘致や新事業支援などが積極的に推進されることとなります。
さらに2003年には、具体的な取り組みとして「熊本セミコンダクタ・フォレスト構想」が策定されました。
その後、2010年には「熊本県産業振興ビジョン2011」が策定され、リーディング産業の育成をはじめとする製造業の振興と成長が支援されました。
2020年策定の「熊本県産業成長ビジョン」では、製造業とIT関連産業を主な対象としつつ、医療、農業、観光などの他業種と連携した取り組みも積極的に支援する方針が示されました。
熊本県の産業政策が大きく転換する契機となったのが、2021年11月のTSMCによる菊陽町進出表明です。
これを受けて、2023年には「くまもと半導体産業推進ビジョン」が策定され、半導体関連産業の製造品出荷額の目標値が2032年に1兆9,315億円と設定されました。
そして、このビジョンは2025年3月に改定され、目標値が2兆8,000億円に上方修正されました。これと同時期の、2025年3月には連携とイノベーションを重視した「くまもとサイエンスパーク推進ビジョン」が策定され、立地企業間や大学・研究機関との共同研究を行うなど、有機的な繋がりの実現を目指すこととなりました。
この「くまもとサイエンスパーク推進ビジョン」は、熊本県の産業成長ビジョンと半導体産業推進ビジョンが改訂されるタイミングに合わせて策定されたものです。
くまもとサイエンスパーク推進ビジョンについて、レポートに詳細にまとめています。
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