世界のAI革命を支える“台湾モデル”―半導体とAIの共進化が描く未来

生成AIの進化を陰で支えているのは、実は台湾企業です。ChatGPT(米OpenAI社)やGemini(米Google社)といった生成AIアプリケーションの裏側には、台湾の半導体技術が欠かせません。
本稿では、世界のAIブームの中心で、TSMCやFoxconnなどの台湾企業がどんな役割を果たしているのか紹介します。
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米シリコンバレー企業と台湾、AI時代の“二人三脚”

AIの頭脳としての役割を担う「GPU」を設計しているのは米国のNVIDIAやAMD社です。しかし、そのGPUを実際に製造しているのは台湾のTSMCです。
TSMCが持つ微細化技術や先端封止技術はGPU製造に不可欠であり、そのためTSMCがNVIDIA社のGPU製造を実質的に独占していると言われています。
さらに、実際にAI処理を担う「AIサーバー」の製造では、GoogleやMicrosoftなどの米国クラウド大手から受注を受けたFoxconn(鴻海)、Quanta(廣達)、Wistron(緯創)などの台湾EMS(電子機器受託製造)企業が生産を担っています。
基盤から電源供給、冷却システムに至るまで台湾企業が担っているため、「AIは台湾なしでは動かない」とまで言われるほど、その存在感は圧倒的です。
台湾の経済エンジンはスマートフォン・PCからAI産業へ

かつて台湾経済を支えたのはスマートフォンやPC産業でした。
しかし、近年のTSMCの売上比率を見ると、AIを含むハイパフォーマンス・コンピューティング向け半導体が急伸しています。2020年の第2四半期には全体の約33パーセントだったAI関連の売上比率が、2025年同時期には約60パーセントへと増加しました。
一方、スマートフォン関連は同期間に約47パーセントから27パーセントへと低下し、AI関連が逆転しました。
台湾経済は今や「AI産業」を新たな成長エンジンに据え、世界のAI供給網の中心として急速な変貌を遂げています。
電力と人材という2つの課題

AI産業の急拡大に伴い、台湾では2つの課題が顕在化しています。
電力不足
今後5年間でAI関連の電力需要は8倍に増加すると予測され、NVIDIAが台湾で構築予定のAIスーパーコンピュータだけでも、10万世帯分の電力を消費する可能性があるとされています。
一方、GoogleやMicrosoft、Appleなど、AI産業を支える主要企業は2030年までにゼロカーボンの実現を掲げており、台湾のAI供給網にも持続可能なエネルギー対応が求められています。
人材不足
半導体設計やAIアルゴリズム開発、クラウド運用など、高度な専門知識を持つ人材の獲得競争は台湾においても激化しています。
大学や研究機関での教育強化や人材育成、海外からの専門人材の受け入れなど、多面的な対策が必要です。
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台湾が「AI大国」となるための鍵

TSMCとNVIDIAの連携は、世界のAIインフラを支えています。GPU製造からAIサーバー製造まで、台湾は世界のAI半導体製造の中核を担っています。
一方で、電力や人材の確保といった課題を克服できるかどうかが、台湾が真の「AI大国」として成長できるかを左右します。
台湾政府はすでに、医療や製造、交通などへのAI応用技術への投資を強化し、社会実装を加速させています。
AIの未来を考えることは、台湾の未来を考えること。そして同時に、世界経済の成長にもつながると考えられます。
AI産業における台湾の半導体企業の状況について、レポートに詳細にまとめています。
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