半導体市場の動向と規模 — AI需要に牽引される高成長期の展望

世界の半導体市場は、AI(人工知能)という大きな技術潮流を背景に、新たな高成長期を迎えようとしています。
本稿では、半導体市場の国際的な統計機関であるWSTS(WORLD SEMICONDUCTOR TRADE STATISTICS:世界半導体市場統計)が公表している予測に基づき、世界の半導体市場規模とその動向を整理します。
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WSTSと半導体市場の定義

WSTSは1986年に設立された、世界の半導体メーカーが自主的に加盟している国際的な統計機関です。
加盟会社の半導体販売額・販売数量の実績値を製品別・地域別に同一分類基準で毎月集計し、それを基にして作成した統計を発行しています。
WSTSが定義する「半導体市場」とは、半導体メーカーの国籍や生産工場の場所にかかわらず、「半導体製品が半導体メーカーから第三者(電子機器メーカー、EMS、商社など)に販売された地域」を指します。
世界の半導体市場の全体動向

2023年の市場調整
2023年の世界半導体市場規模は5,268億8,500万ドルとなり、前年比8.2%のマイナス成長となりました。
この背景には、世界的なインフレやそれに伴う利上げ、地政学的リスクの高まりが、個人消費や企業の設備投資に影響を及ぼしたことが挙げられます。その結果、AI関連や自動車用途を除く分野では、半導体需要が総じて低調に推移しました。
2024年以降の急速な回復と成長加速
2024年には市場環境が好転し、世界半導体市場は前年比19.7%増の高成長となりました。
AI需要を見越したデータセンター投資に連動する形でメモリー製品や GPU などのロジック製品が半導体市場の成長を支えました。
一方で、AI関連以外の領域では低調に終わるなど、用途による二極化が顕著に現れました。
このデータセンター投資主導の成長基調は2025年以降も継続すると見込まれており、半導体市場規模は、2025年に前年比22.5%増の7,722億4,300万ドル、2026年には前年比26.3%増の9,754億6,000万ドルに達するなど、成長の加速が予測されています。
IC市場全体の動向

2024年のIC(集積回路)市場全体は、前年比25.9%増の5,395億500万ドルとなりました。
IC市場は2023年に前年比9.7%減とマイナス成長を経験しましたが、2024年以降は半導体市場の回復傾向に対して中心的な役割を担っています。
2026年には、IC市場規模は8,742億9,100万ドルに達すると予測されており、AI需要の爆発的な拡大に伴い、特にメモリーとロジック製品が極めて高い成長率が予測されています。
メモリー製品
メモリー製品は2023年に前年比28.9%減と大きく落ち込みましたが、2024年には前年比79.3%増と急回復しました。
この高成長は、AI需要を見越したデータセンター投資に強く連動しています。2026年には市場規模が2,948億2,100万ドルに達する見込みです。
ロジック製品
GPUなどのロジック製品もAI需要に支えられ、前年比20.8%増と高い伸びを記録しました。
その後も成長は続き、2025年には37.1%増、2026年には32.1%増と高い成長率が予測されており、2026年の市場規模は3,908億6,300万ドルに達する見通しです。
アナログ/マイクロ製品
アナログ製品は2023年に前年比8.7%減、2024年にも2.0%減とマイナス成長が続きましたが、2025年以降は回復に転じ、2025年・2026年ともに前年比7.5%増とプラス成長が見込まれています。
一方、主に機器の制御や演算処理に用いられるマイクロ製品は2023年に前年比3.5%減となったものの、2024年には3.0%増とプラス成長に転じました。
その後も回復基調が続き、2025年には7.9%増、2026年には13.9%増と、成長ペースが加速する見通しです。
IC製品以外の市場動向

IC以外の製品群であるディスクリート、オプトエレクトロニクス、センサー・アクチュエーターは、2024年にいずれもマイナス成長となりました。
ディスクリートは電源制御やスイッチなど機器の基盤機能を担う単体部品、オプトエレクトロニクスは発光・受光など光を扱う部品、センサー・アクチュエーターは温度・圧力・動きなどの検知や機器の駆動に主に用いられるものです。
前年比では、ディスクリートが12.7%減、オプトエレクトロニクスが4.8%減、センサー・アクチュエーターが4.1%減と、全項目で市場縮小が確認されています。
2025年以降は緩やかな回復局面に入ると予測されており、2026年の前年比成長率は、ディスクリートが8.2%増、オプトエレクトロニクスが5.7%増、センサー・アクチュエーターが8.7%増と、すべてプラス成長が見込まれています。
地域別の市場動向

WSTSの予測では、世界の半導体市場は米州、EMEA(欧州、中東、アフリカ)、日本、アジア太平洋の4地域に分類されます。
米州
米州市場は2024年に前年比45.2%増と、4地域の中で最も高い成長率を記録しました。
その後も拡大基調が続き、2026年には市場規模が3,385億7,400万ドルに達する見込みです。
EMEA
EMEA市場は2024年に前年比8.1%減の512億5,000万ドルとマイナス成長となりました。
ただし、2025年には回復に転じ、2026年には604億2,900万ドルまで拡大すると予測されています。
日本
日本の半導体市場は、2023年に467億5,100万ドル、円換算で6兆5,637億円となり、前年比3.8%の成長を記録しました。
2024年には前年比7.9%増の7兆797億円へと拡大しましたが、2025年は前年比6.3%減の6兆6,361億円と、再びマイナス成長に転じる見通しです。
アジア太平洋
アジア太平洋市場は2023年に前年比12.4%減と落ち込みましたが、2024年には16.4%増と回復しました。
その後も成長が続き、2026年には市場規模が5,262億9,300万ドルに達すると見込まれています。
市場の成長を支える主要要因

AI関連投資の拡大
2024年以降に半導体市場が回復・拡大に転じる最大の要因の一つが、AI需要を見据えたデータセンター投資の拡大です。
これにより、メモリー製品やGPUなどのロジック製品の需要が急拡大しています。
今後は、AI機能を搭載した端末(エッジAI)の増加など、応用領域の広がりが見込まれており、電子機器への半導体搭載金額の増加に繋がると期待されています。
デジタル化の進展
新型コロナウイルス感染症のパンデミックを契機として在宅勤務やオンライン授業が普及し、さらに5Gスマートフォンの進化も相まってライフスタイルのデジタル化が進展しました。
これに伴いデータ通信量が増大し、通信インフラやデータセンター関連への投資が大幅に拡大したことも、半導体市場を押し上げる要因となりました。
結論

世界の半導体市場は、2023年に前年比8.2%のマイナス成長を経験しました。これは、世界的なインフレや利上げ、地政学的リスクの高まりを背景に、個人消費や企業の設備投資が抑制されたことが主な要因です。
しかし、2024年には前年比19.7%のプラス成長へと転じ、市場は回復局面に入りました。特に、生成AIの普及を背景としたデータセンター投資の拡大が、半導体需要を強力に押し上げています。この動きは、メモリー製品やGPUを含むロジック製品を中心に顕著であり、市場成長の原動力となっています。
こうした流れを受け、世界の半導体市場規模は2026年に9,754億6,000万ドルへと拡大する見通しです。
中長期的には、データセンタ関連需要やAI関連需要が市場を牽引する他、エッジAIの普及による応用分野の拡大や自動車の電動化・高性能化、脱炭素化を背景とした産業・インフラ分野の堅調な需要も、機器1台当たりの半導体搭載金額の増加を通じて、市場の持続的な成長を下支えすると考えられます。
今後も、関税問題や輸出規制を含む地政学的リスクといった不透明要素は残りますが、半導体はデジタル社会の形成にとって不可欠な基盤であり、その戦略的重要性は今後さらに高まっていくと見込まれます。
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