熊本県発の新産業創出施策「UXプロジェクト」の全貌と展望

熊本県は現在、集積が進む半導体産業や自動車関連産業に続く、県内産業の「第3の柱」の構築を目指しています。

その具体的施策として推進されているのが「UXプロジェクト」です。

本プロジェクトは、50年、100年後を見据え熊本県の強みであるライフサイエンス分野(医療・介護・健康・食・ビューティー・スマート農業など)を基軸に、新たなビジネスを持続的に創出するエコシステムの形成を目的としています。

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UXプロジェクトの理念

UXプロジェクトの実現する将来の社会像は『自分らしく最期まで「健康で」「楽しく」「美しく」いられる生活の実現』です。

この理念は、熊本県が有する地域資源と深く結びついています。

大学や研究機関の高度な生命科学研究を基盤とする「予防医療」や「未病対策」(健康で)、全国有数の農業生産額や医療・福祉従事者の多さを背景とした「スマート農業」「介護ロボット」(楽しく)、さらに豊富な地下水や農産物を生かした「食」「ビューティー」(美しく)といった分野が、その具体的な展開領域です。

県内には理工系大学からの人材輩出や、ライフサイエンス関連ベンチャー企業の活躍といった基盤が既に形成されており、これらの強みを「第3の柱」として産業化することが狙いです。

熊本県が有するライフサイエンス分野

熊本県がライフサイエンス分野に注力する背景には、学術的・産業的基盤が存在します。

県内には、発生医学研究所や薬学部を有する熊本大学をはじめ、ライフサイエンス教育に力を入れる崇城大学、農学部を有する東海大学など、関連人材を輩出する教育機関が集積しています。

また、産業面では近年、ライフサイエンス系ベンチャー企業の活躍も見られるほか、人口10万人あたりの医師数・看護師数が全国上位に位置するなど、医療体制も充実しています。これら既存の産業集積と人材基盤が、新産業創出の土台となっています。

「UX」に込められた意味

「UXプロジェクト」の「UX」には、以下の意味が込められています。

「U」は、「You(身近な人から世界中の人々を指して「あなた」と表現)」、「結う(人と人、人と技術、人と情報を結びつける)」、「熊(熊本発の価値を追求)」という3つの意味を内包しています。

「X」は「Cross(人と人、人と技術、人と情報をかけあわせる)」および「未知(未知のイノベーションへの期待)」を表しています。

ビジネスの持続的創出とエコシステム化

産業のエコシステムを構築するため、UXプロジェクトでは7つの要素を包括的に整備するアプローチを採用しています。

第一に「プレーヤー」です。スローガンに共感する多種多様な人材を県内外から呼び込み、育成します。

第二に「ネットワーク」で、大学や企業、さらには海外のエコシステムとの接続機会を提供します。

第三に「コンテンツ」として、産・学・官・金からなる「チーム熊本」が、資金供給や伴走型サポートを行う体制を構築しています。

さらに、実証実験の場となる「フィールド」、ビジネス創出に不可欠な「データ」へのアクセス確保、行政による規制緩和などの「政策」的支援、そしてこれらが物理的に交わる拠点としての「ハコ」の整備が進められています。

これら7つの要素を連動させることで、単発的な支援に留まらない持続的なビジネス創出環境の形成を目指しています。

UXプロジェクトの進捗と第2期実施計画

UXプロジェクトは、2030年までの10年間を見据えた長期プロジェクトであり、段階的な実施計画に基づいて推進されています。

第1期(2021~2024年度)

第1期では、会員登録制度である「UXメンバーシップ制度」の創設や実証実験サポート事業の展開を通じて、ネットワーク形成と人材育成に重点が置かれました。併せて、交流拠点「Pre-UXイノベーションハブ」が開設され、事業者や研究者の交流基盤が整備されました。

第2期(2025~2027年度)

第2期では、取り組みがより本格的なフェーズへと移行します。

益城町のテクノリサーチパーク内では、2026年度中の開設を目指し、中核拠点「UXイノベーションハブ」の整備が進められています。

同ハブは、既存の熊本テクノポリスセンターをリノベーションし、コワーキングスペースやイベントスペースに加え、専用オフィス・ラボ、共同ラボ、テストマーケティングスペースなどを備える計画です。

ここでは、研究者や起業家が日常的に交流し、技術とアイデアがクロスすることで、イノベーションの創発と人流の促進が融合する場の実現を目指しています。

また、熊本大学や県医師会と連携し、「くまもとメディカルネットワーク(KMN)」の医療データを活用した共同研究スキームの構築など、データ連携基盤の実装も計画されています。

新大空港構想

UXプロジェクトは、阿蘇くまもと空港周辺地域を核とした地域活性化を目指す「新大空港構想」においても、重要な施策として位置づけられています。

近年は、TSMCの熊本進出を契機として半導体関連産業の集積が加速し、県内の経済環境は大きく変化しています。

UXプロジェクトでは、この変化を好機と捉え、空港周辺エリアであるテクノリサーチパークを拠点に、半導体・自動車産業に続く「第3の柱」を形成するとともに、研究機関や企業、人材が集積する「知の拠点」を創出することで、空港周辺地域に持続的なにぎわいと経済波及効果をもたらすことを目指しています。

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